Birkenstock(ビルケンシュトック)ドイツ

 初めて目にしたときの印象はとにかく奇抜だった。オブリーク・トウと言われる足の形そのままのスタイルは、これまでの常識に照らし合わせればあり得ないことだったからだ。なのになぜか、素直に恰好よいと思ったし、その感覚は間違っていなかった。それから間もなく、1990年代の日本にすさまじいブームがやってきたのだ。
 1774年創業のビルケンシュトックは第一次世界大戦下、負傷兵のオーソベディック・シューズ製作を請け負っていた。歩行機能をサポートする中敷き(フットベット)、そしてその機能をさらに高める、つま先がゆったり広がるフォルムービルケンシュトック最大の特徴である理論と機能が100年以上の月日をかけて医学的に評価されたのである。つまり、そのフォルムは足が本来持つしなしなやかな美しさをついきゅうした、究極の機能美だったのだ。 
 この靴をいち早くファッションとして支持したのは1960年代のあアメリカ、ヒッピーだった。既成概念に縛られることを嫌い、自由を手に入れることを夢見た彼が「身体の開放」を遂げたこのブランドに共感を覚えたのは、当然の成り行きだったのかもしれない。
 ヒッピーのメンタリティは政治、経済、あらゆるものが癒着した現代の僕らの気持ちをそのまま代弁している。30年後の僕たちが、それを体現したビルケンを愛したのも自然のことだろう。

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<2021年の秋頃からはレザースニーカーも取り扱いたいですがコロナ次第です>

平凡社 紳士靴図鑑ベスト50ブランドより

【令和2年12月21日】

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