ボロネーゼ製法の靴はなぜ足に吸い付くのか?

ボロネーゼ製法の商品紹介

 デザインや使われている素材、ブランドの歴史なども重要なのですが、靴に魅せられてその世界にはまり込んでいくと、やがて「製法」の大切さを実感することになります。なぜならこれは木型とともに履き心地にかかわる。とても大切な要素だからです。
 その製法では、ビスポークや高級レディメイドなどに散見する古典的なハンドソーンウェルテッドや、それを機械化したグッドイヤーウェルテッド、軽くて返りのいい靴に出来るマッケィあたりがおなじみですが、実はマッケィのバリエーションにボロネーゼ製法という技術もあります。別称がボロネーゼですから、イタリアボローニャあたりが発祥地なのでしょうが、現在、これをこなすメーカーはそのイタリアでもごく少数。世界的にも珍しい製法とされています。簡単に説明すると、各パーツを縫合してアッパーを作ること、すなわち製甲において、マッケィなど他の製法ではアッパーとライナーをあらかじめ縫い合わせて、その後に木型に吊りこんで成型します。いっぽう、ボロネーゼ製法は底付けの工程などはマッケィとさほど違いはないものの、製甲と吊り込みにおいて大きな特徴があります。すなわち、ライナーの革を木型に吊り込んでおき、そこにアッパーを載せ改めて吊り込むという工程を踏むのです。当然、マッケィなどに比べると工程数は多くなり、技術面でもそのために鍛錬が求められるのですが、アッパーとライナーがピタッと密着した状態で成型されるため、まりでライニングが施されていない一枚革の靴のように柔らかく返りのいい靴になるわけです。
 そして、この製法をブランドの最大の個性にしているのが、イタリアではなくスペインのマグナーニです。1954年製靴業が盛んな同国の南部の町アルマサンに設立されたマグナーニは本国のみならずEU各国やアメリカも自らのマーケットとし、ここ日本でも2000年ころに上陸を果たして以来人気上昇中のファクトリーブランドなのです。
 もともと草履や足袋の時代が長かったせいか、概して柔らかい靴を好む傾向が強い私たち日本人にとっては、こうしたボロネーゼ製法の靴がじつは大変向いていると言われています。

世界文化社 「靴を読む」より
【令和2年12月1日】

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